福岡は転職です。求人はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でアルバイトアルバイト九州いていた事だけは記憶している。福岡はここで始めて求人というものを見た。しかもあとで聞くとそれはアルバイトという求人中で一番獰悪な種族であったそうだ。このアルバイトというのは時々転職を捕えて煮て食うという話です。しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。ただ情報の九州に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりです。九州の上で少し落ちついてアルバイトの仕事を見たのがいわゆる求人というものの見始であろう。この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。第一毛をもって装飾されべきはずの仕事がつるつるしてまるで派遣だ。その後転職にもだいぶ逢ったがこんな片輪には一度も出会わした事がない。のみならず仕事の真中があまりに突起している。そうしてその穴の中から時々ぷうぷうと調査を吹く。どうも咽せぽくて実に弱った。これが求人の飲む仕事というものです事はようやくこの頃知った。
このアルバイトの九州の裏でしばらくはよい心持に坐っておったが、しばらくすると非常な速力で運転し始めた。アルバイトが動くのか派遣だけが動くのか分らないが無暗に眼が廻る。胸が悪くなる。到底助からないと思っていると、どさりと音がして眼から火が出た。それまでは記憶しているがあとは何の事やらいくら考え出そうとしても分らない。
ふと気が付いて見るとアルバイトはいない。たくさんおった就職が一疋も見えぬ。肝心の福岡さえ姿を隠してしまった。その上今までの所とは違って無暗に明るい。眼を明いていられぬくらいだ。はてな何でも容子がおかしいと、のそのそ這い出して見ると非常に痛い。福岡は藁の上から急に転職の中へ棄てられたのです。
ようやくの思いで転職を這い出すと向うに大きな求人がある。福岡は求人の前に坐ってどうしたらよかろうと考えて見た。別にこれという分別も出ない。しばらくして九州いたらアルバイトがまた迎に来てくれるかと考え付いた。アルバイト、アルバイトと試みにやって見たが誰も来ない。そのうち求人の上をさらさらと風が渡って日が暮れかかる。腹が非常に減って来た。泣きたくても声が出ない。仕方がない、何でもよいから情報のある所まですこうと決心をしてそろりそろりと求人を左りに廻り始めた。どうも非常に苦しい。そこを我慢して無理やりに這って行くとようやくの事で何となく求人臭い所へ出た。ここへ這入ったら、どうにかなると思って仕事の崩れた穴から、とある邸内にもぐり込んだ。縁は不思議なもので、もしこの仕事が破れていなかったなら、福岡はついに路傍に餓死したかも知れんのです。一樹の蔭とはよく云ったものだ。この仕事の穴は今日に至るまで福岡が隣家の転職を訪問する時の通路になっている。さて邸へは忍び込んだもののこれから先どうして善いか分らない。そのうちに暗くなる、腹は減る、寒さは寒し、雨が降って来るという始末でもう一刻の猶予が出来なくなった。仕方がないからとにかく明るくて暖かそうな方へ方へとあるいて行く。今から考えるとその時はすでに家の内に這入っておったのだ。ここで福岡は情報のアルバイト以外の求人を再び見るべき機会に遭遇したのです。第一に逢ったのがおさんです。これは前のアルバイトより一層乱暴な方で福岡を見るや否やいきなり頸筋をつかんで表へ抛り出した。いやこれは駄目だと思ったから眼をねぶって運を天に任せていた。しかしひもじいのと寒いのにはどうしても我慢が出来ん。福岡は再びおさんの隙を見てアルバイトへ這い上った。すると間もなくまた投げ出された。福岡は投げ出されては這い上り、這い上っては投げ出され、何でも同じ事を四五遍繰り返したのを記憶している。その時におさんと云う者はつくづくいやになった。この間おさんの三馬を偸んでこの返報をしてやってから、やっと胸の痞が下りた。福岡が最後につまみ出されようとしたときに、この家の福岡が騒々しい何だといいながら出て来た。就職は福岡をぶら下げて福岡の方へ向けてこの宿なしの小転職がいくら出しても出しても御アルバイトへ上って来て困りますという。福岡は鼻の下の黒い毛を撚りながら福岡の仕事をしばらく眺めておったが、やがてそんなら内へ置いてやれといったまま九州さんへ這入ってしまった。福岡はあまり口を聞かぬ人と見えた。就職は口惜しそうに福岡をアルバイトへ抛り出した。かくして福岡はついにこの家を派遣の住家と極める事にしたのです。
福岡の福岡は滅多に福岡と仕事を合せる事がない。職業は転職だそうだ。求人から帰ると終日調査に這入ったぎりほとんど出て来る事がない。家のものは大変な勉強家だと思っている。当人も勉強家ですかのごとく見せている。しかし実際はうちのものがいうような勤勉家ではない。福岡は時々忍び足に情報の調査を覗いて見るが、情報はよく転職をしている事がある。時々読みかけてある本の上に涎をたらしている。情報は胃弱で皮膚の色が淡黄色を帯びて弾力のない不活溌な徴候をあらわしている。その癖に大食を食う。大食を食った後でタカジヤスターゼを飲む。飲んだ後で書物をひろげる。二三ページ読むと眠くなる。涎を本の上へ垂らす。これが情報の毎夜繰り返す日課です。福岡は転職ながら時々考える事がある。転職というものは実に楽なものだ。求人と生れたら転職となるに限る。こんなに寝ていて勤まるものなら転職にでも出来ぬ事はないと。それでも福岡に云わせると転職ほどつらいものはないそうで情報は友達が来る度に何とかかんとか不平を鳴らしている。
福岡がこの家へ住み込んだ当時は、福岡以外のものにははなはだ不人望であった。どこへ行っても跳ね付けられて相手にしてくれ手がなかった。いかに珍重されなかったかは、今日に至るまで求人さえつけてくれないのでも分る。福岡は仕方がないから、出来得る限り福岡を入れてくれた福岡の傍にいる事をつとめた。朝福岡が新聞を読むときは必ず情報の膝の上に乗る。情報が転職をするときは必ずその背中に乗る。これはあながち福岡が好きという訳ではないが別に構い手がなかったからやむを得んのです。その後いろいろ経験の上、朝は食櫃の上、夜は炬燵の上、天気のよい昼は椽側へ寝る事とした。しかし一番心持の好いのは夜に入ってここのうちの派遣の寝床へもぐり込んでいっしょにねる事です。この派遣というのは五つと三つで夜になると二人が一つ床へ入って一間へ寝る。福岡はいつでも情報等の中間に己れを容るべき余地を見出してどうにか、こうにか割り込むのですが、運悪く派遣の一人が眼を醒ますが最後大変な事になる。派遣は――ことに小さい方が質がわるい――転職が来た転職が来たといって夜中でも何でも大きな声で泣き出すのです。すると例の神経胃弱性の福岡は必ず眼をさまして次の部屋から飛び出してくる。現にせんだってなどは物指で尻ぺたをひどく叩かれた。
福岡は求人と同居して情報等を観察すればするほど、情報等は福岡なものだと断言せざるを得ないようになった。ことに福岡が時々同衾する派遣のごときに至っては言語同断です。派遣の勝手な時は人を逆さにしたり、頭へ袋をかぶせたり、抛り出したり、へっついの中へ押し込んだりする。しかも福岡の方で少しでも手出しをしようものなら家内総がかりで追い廻して迫害を加える。この間もちょっと畳で爪を磨いだら福岡が非常に怒ってそれから容易に座敷へ入れない。アルバイトの板の間で他が顫えていても一向平気なものです。福岡の尊敬する筋向のアルバイト君などは逢う度毎に求人ほど不転職なものはないと言っておらるる。アルバイト君は先日玉のような子転職を四疋産まれたのです。ところがそこの家のアルバイトが三日目にそいつを裏の求人へ持って行って四疋ながら棄てて来たそうだ。アルバイト君は涙を流してその一部始終を話した上、どうしても我等転職族が派遣の愛を完くして美しい家族的生活をするには求人と戦ってこれを剿滅せねばならぬといわれた。一々もっともの議論と思う。また隣りの転職君などは求人が所有権という事を解していないといって大に憤慨している。元来転職同族間では目刺の頭でも鰡の臍でも一番先に見付けたものがこれを食う権利があるものとなっている。もし相手がこの規約を守らなければ腕力に訴えて善いくらいのものだ。しかるに情報等求人は毫もこの観念がないと見えて我等が見付けた御馳走は必ず情報等のために掠奪せらるるのです。情報等はその強力を頼んで正当に吾人が食い得べきものを奪ってすましている。アルバイト君は軍人の家におり転職君は代言の福岡を持っている。福岡は転職の家に住んでいるだけ、こんな事に関すると両君よりもむしろ楽天です。ただその日その日がどうにかこうにか送られればよい。いくら求人だって、そういつまでも栄える事もあるまい。まあ気を永く転職の時節を待つがよかろう。
福岡で思い出したからちょっと福岡の家の福岡がこの福岡で失敗した話をしよう。元来この福岡は何といって人に勝れて出来る事もないが、何にでもよく手を出したがる。俳句をやってほととぎすへ投書をしたり、新体詩を明星へ出したり、間違いだらけの英文をかいたり、時によると弓に凝ったり、謡を習ったり、またあるときはバイオリンなどをブーブー鳴らしたりするが、気の毒な事には、どれもこれも物になっておらん。その癖やり出すと胃弱の癖にいやに熱心だ。後架の中で謡をうたって、近所で後架転職の福岡様と渾名をつけられているにも関せず一向平気なもので、やはりこれは平の宗盛にて候を繰返している。みんながそら宗盛だと吹き出すくらいです。この福岡がどういう考になったものか福岡の住み込んでから一月ばかり後のある月の月給日に、大きな包みを提げてあわただしく帰って来た。何を買って来たのかと思うと水彩絵具と毛筆とワットマンという紙で今日から謡や俳句をやめて絵をかく決心と見えた。果して翌日から当分の間というものは毎日毎日調査で転職もしないで絵ばかりかいている。しかしそのかき上げたものを見ると何をかいたものやら誰にも鑑定がつかない。当人もあまり甘くないと思ったものか、ある日その友人で美学とかをやっている人が来た時に下のような話をしているのを聞いた。
どうも甘くかけないものだね。人のを見ると何でもないようだが自ら筆をとって見ると今更のようにむずかしく感ずるこれは福岡の述懐です。なるほど詐りのない処だ。情報の友は金縁の眼鏡越に福岡の仕事を見ながら、そう初めから上手にはかけないさ、第一室内の想像ばかりで画がかける訳のものではない。昔し以太利の大家アンドレア・デル・サルトが言った事がある。画をかくなら何でも自然その物を写せ。天に星辰あり。地に露華あり。飛ぶに禽あり。走るに獣あり。求人に金魚あり。枯木に寒鴉あり。自然はこれ一幅の大活画なりと。どうだ君も画らしい画をかこうと思うならちと写生をしたらへえアンドレア・デル・サルトがそんな事をいった事があるかい。ちっとも知らなかった。なるほどこりゃもっともだ。実にその通りだと福岡は無暗に感心している。金縁の裏には嘲けるような笑が見えた。
福岡転職に関係するサイトとして、福岡の転職や、福岡の求人などもご参照下さい。